税率を変えれば東京集中は崩れるのか

東京一極集中はよく問題にされる。

人口も企業も本社機能も、多くが東京圏に集まっている。
そこで自然に出てくる発想がある。

法人税率を地域ごとに大きく変えれば、企業は分散するのではないか。

税は強いインセンティブだ。
直感としては筋が通っている。

だが、構造として本当に効くのだろうか。

税は効く。だが万能ではない

まず前提として、税率が立地に影響を与えること自体は否定できない。

  • 州ごとに法人税率が異なる
  • 税優遇で企業誘致を行う

そうした国は確かに存在する。特に、

  • 工場
  • 物流拠点
  • データセンター

のように立地の可動性が比較的高い産業では、税率は一定の影響を持ち得る。

この点を軽視する必要はない。

それでも一斉流出が起きていない理由

よくある疑問がある。

海外にはアイルランドやタックスヘイブンがある。
それでも日本企業は全面的に流出していないではないか。

理由は単純で、税だけで立地は決まらないからである。

企業の立地は、税率以外の要素に強く影響される。

  • 日本市場の規模
  • 取引先の集中
  • 金融機関や官庁の集積
  • 人材の流動性
  • 法制度の安定性

東京は、これらが重なった都市である。

税率差があっても、それを上回る便益が存在すれば、企業は動かない。

集積は自己強化する

都市経済学では、都市規模が大きいほど生産性が上がる傾向が確認されている。

人と企業が集まることで、

  • 情報の流通が速くなる
  • 取引コストが下がる
  • 専門人材を確保しやすくなる

といった効果が生まれる。

「集まっているから集まる」という自己強化構造である。

この構造を、税率だけで崩すのは簡単ではない。

実物移転と利益移転は別問題

とはいえ、「動かない」と断言するのも単純化である。

全面的な国外移転は起きていなくても、

  • 持株会社を海外に置く
  • 特許やブランドの帰属先を移す
  • 利益をどの法人で確定させるかを変える

といったかたちで、「利益の置き場所」を動かすことは現実に行われている。

税差が拡大すれば、

  • 工場やオフィスが動かなくても
  • 利益の帰属は動く

という可能性は高まる。

税は効かないのではない。
どこに、どのレイヤーで効くかが違うのである。

極端な税差は副作用を伴う

仮に東京だけ法人税率を大幅に引き上げた場合、

  • 国内での形式的移転
  • 持株会社化の加速
  • 海外拠点への利益移転

といった動きが強まる可能性は否定できない。

全面流出が誇張である一方、
税差が一定の閾値を超えれば行動が変わることも事実である。

問題は「効くか効かないか」ではない。
どのレベルで、どの産業に、どの形で効くのかである。

本質は税率ではなく構造

東京集中の背景には、

  • 行政機能の集中
  • 大学・研究機関の集中
  • 金融機能の集中
  • 国際空港や交通網の集中

といった複合要因がある。

税率はその一部に過ぎない。

分散を本気で目指すなら、

  • 行政機能の再配置
  • 研究拠点の分散
  • 交通インフラの再設計
  • 産業クラスターの形成

といった政策の組み合わせが必要になる。

単純なレバーは存在しない

「税率を変えれば分散する」という発想は分かりやすい。

しかし、現実の都市構造は単一の政策で動くほど単純ではない。

税は有効な手段になり得る。
だが、それだけで構造が変わるわけではない。

分散は、構造の再設計によってしか実現しない。

その前提に立たなければ、議論はすれ違う。

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ぜんたろう

ぜんたろう

FP2級/宅建士。お金の話が好物。インデックス投資がメインなのに個別株・ETFにも手を出す。ここ数年で投資スタイルが確立した筈だがジャンク株に心を奪われがち。 --- 永遠の見習いプログラマ (SIer複数→スタートアップ複数→大きめベンチャー)

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