貯蓄率が高くても安心できない理由

──五層構造で考える資産成長

前回の記事では、五層構造モデルを用いて「備え」をどう設計しているかを整理した。
今回はその続きとして、この構造を前提に、

  • 高い貯蓄率をどう資産成長につなげているか
  • なぜ「貯蓄率が高い=安心」ではないのか
  • 成長と安定をどう両立させているのか

について、私自身の考えをまとめてみたい。

2026年の不確実性に向けた備えであり、同時に自省でもある。

貯蓄率が高いのに、不安が消えない理由

一般に、貯蓄率が高いことは「優秀」「堅実」と評価されやすい。
実際、私自身も平均して高めの貯蓄率を維持してきた。

それでも、過去を振り返ると、
貯蓄率が高いだけの時期は、必ずしも安心できていなかった。

理由は単純で、

  • 貯めたお金が
  • どこに向かい
  • どのように使われ
  • どの局面で役に立つのか

が、自分の中で整理されていなかったからだ。

貯蓄率は「出力」であって「設計」ではない

貯蓄率は重要だが、それ自体が安心を保証するものではない。

貯蓄率とは、言ってしまえば
お金を生み出すエンジンの出力にすぎない。

  • 出力が高くても、行き先が決まっていなければ不安定になる
  • ギアが噛み合っていなければ、空回りする
  • ブレーキがなければ、むしろ怖い

安心感を生むのは、
貯蓄率の高さそのものではなく、
そのお金がどう流れるかという設計だ。

「貯蓄率が高い=安心」にならない3つの理由

① 行き先が決まっていない

とりあえず貯める。
とりあえず積み立てる。
下落が来たら、その時に考える。

これは一見慎重だが、実際には
判断を先送りしているだけでもある。

② すべてが同じ不安に晒されている

生活防衛資金と、
長期成長を狙う資金が、
同じ口座・同じ感情で扱われていると、

相場の変動がそのまま生活不安に直結する。

③ フローが「止まる前提」になっている

多くの場合、安心の前提は、

  • 今の労働収入が続くこと
  • 大きな環境変化は起きないこと

に、無意識のうちに置かれている。

この前提が崩れたとき、
生活と資産のあいだに、緩衝材がない。

収入が止まるかどうかは、予測できない。
だからこそ、「止まらない前提」で設計すること自体が、
実は不安定でもある。

五層構造は「貯蓄率を変換する装置」

五層構造モデルは、
何を買うかを決めるためのものではない。

入ってきたお金を、どう分解し、どう役割分担させるか
そのための設計図だ。

前回示した五層構造の表は、
価格変動や成果の不確実性が大きい層ほど上段に、
生活と直結し、安心して取り崩せる層ほど下段に配置している。

この構造があることで、

  • 同じ貯蓄率でも
  • 判断の重さ
  • 不安の質

が大きく変わる。

私のフロー設計(考え方だけ)

金額の話はしない。
順序と原則だけを書く。

  • 余剰資金は、まず生活と直結する層を厚くする
  • そこが満たされている限り、相場の変動は「恐怖」ではなくなる
  • 積立は判断しない。止めない
  • 下落時の追加投入は、待機資金からのみ行う
  • 回復局面では、自然に待機資金が戻るのを待つ

増やすために動くのではない。
動かなくて済む状態を先に作る。

成長と安定は、対立しない

成長と安定は、しばしばトレードオフだと言われる。

だが実感としては逆だ。

  • 安定があるから、成長を待てる
  • 守りがあるから、判断が鈍らない

成長とは、
リスクを取ることではなく、
リスクを取れる状態を維持することだと思っている。

まとめ

高い貯蓄率は、強力だ。
だが、それだけでは安心できない。

貯蓄率と資産成長の間には、
設計が必要だ。

五層構造は、そのための一つの道具にすぎないが、
少なくとも私にとっては、

  • 判断を減らし
  • 不安を分解し
  • 静かに眠る

ための役割を果たしてくれている。

私が目指しているのは、
外部環境が変化しても、
安心して眠れる状態でいられることだ。

この記事を書いた人 Wrote this article

ぜんたろう

ぜんたろう

FP2級/宅建士。お金の話が好物。インデックス投資がメインなのに個別株・ETFにも手を出す。ここ数年で投資スタイルが確立した筈だがジャンク株に心を奪われがち。 --- 永遠の見習いプログラマ (SIer複数→スタートアップ複数→大きめベンチャー)

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