以前、資産形成は利回りではなく貯蓄率で決まるという記事を書いた。
資産 = 入金額 × 運用期間 × 利回り
この式から分かる通り、個人が最もコントロールできるのは「入金額」、すなわち貯蓄率である。
では次に考えるべきはこれだ。
貯蓄率はどれくらいが適切なのか。
一般的な目安はあるが、それだけでは不十分
よく言われる目安は次の通りである。
| 貯蓄率 | 評価 |
|---|---|
| 10〜20% | ゆっくり資産形成 |
| 20〜30% | 標準的 |
| 30〜50% | 高い |
| 50%以上 | 資産形成が加速 |
確かに方向性としては正しい。
しかしこの表だけでは重要なことが抜け落ちている。
それは
貯蓄率は固定値ではない
という点である。
なぜ貯蓄率は人によって大きく変わるのか
貯蓄率は単なる「努力量」ではない。
実際には
- 収入
- 支出構造
- 家族構成
によって決まる。
特に影響が大きいのは家族構成である。
家族構成による現実的なレンジ
一般的な感覚としては、次のようなレンジになる。
| 世帯 | 現実的な貯蓄率 |
|---|---|
| 単身 | 30〜60% |
| 共働き夫婦(子なし) | 30〜50% |
| 子ども1人 | 20〜35% |
| 子ども2人 | 10〜25% |
もちろん収入や地域によって大きく変わるが、子どもを複数育てながら高い貯蓄率を維持するのは容易ではない。
これは意志の問題ではなく、構造の問題である。
貯蓄率は「支出」で決まる
ここで一つ重要な点がある。
貯蓄率は
収入ではなく支出で決まる
ということだ。
同じ年収でも
- 支出が低い人は貯蓄率が高くなる
- 支出が高い人は貯蓄率が下がる
つまり資産形成の本質は
収入の最大化ではなく、支出構造の設計
にある。
貯蓄率50%は特別な水準である
貯蓄率50%前後は、資産形成において一つの転換点になる。
なぜなら
- 投資額が大きくなる
- 支出が低く抑えられる
という二つの効果が同時に働くからである。
ただしこれは主に
- 単身世帯
- 子どもがいない世帯
で現実的な水準であり、一般化はできない。
資産形成には「適切な時期」がある
ここでさらに重要なのが、時間の視点である。
現実の家計では、貯蓄率は人生を通して一定ではない。
典型的には次のようなライフサイクルになる。
- 子どもなし→高い貯蓄率
- 子育て期→貯蓄率低下
- 子ども独立後→再び貯蓄率上昇
つまり資産形成は
人生全体で見る必要がある。
若い時期や子どもがいない時期は、貯蓄率を高めやすい。
一方で子育て期は、支出が増えるため貯蓄率は下がる。
これは避けるべき問題ではなく、前提として受け入れるべき構造である。
「最適な貯蓄率」は一つではない
ここまでを踏まえると、結論はシンプルになる。
最適な貯蓄率は一つではない。
重要なのは
- 現在の生活を維持できること
- 長期で資産形成を継続できること
この二つのバランスである。
無理に高い貯蓄率を維持しても、継続できなければ意味がない。
五層構造との接続
前回までの整理を踏まえると、貯蓄率は単なる「貯める力」ではない。
- 第①層(円資産)への積み上げ
- 第②層(流動性ファンド)への供給
を担い、
- 下落局面での追加投資
- 取り崩し時の柔軟性
を支える役割を持つ。
つまり、
貯蓄率は将来の意思決定の自由度を高める装置である。
まとめ
貯蓄率は資産形成を大きく左右する重要な要素である。
しかしそれは固定的な数値ではなく、
- 家族構成
- 支出構造
- 人生のタイミング
によって変わる。
重要なのは「何%か」ではない。
いつ、どれだけ貯めるか
である。
資産形成は、常に同じペースで進むものではない。
人生のどこで資産形成を進めるか。
それ自体が、戦略なのである。
-
取り崩し戦略(実務)──どの資産から使うかではなく、どう判断するか
記事がありません
この記事が気に入ったら
フォローをお願いします!
この記事を書いた人 Wrote this article
ぜんたろう
FP2級/宅建士。お金の話が好物。インデックス投資がメインなのに個別株・ETFにも手を出す。ここ数年で投資スタイルが確立した筈だがジャンク株に心を奪われがち。 --- 永遠の見習いプログラマ (SIer複数→スタートアップ複数→大きめベンチャー)