※将来運用資金…本来は老後や将来の生活に備えるため、長期的な運用を前提として積み立てられている資金を指す。
将来に備えるための資金と、
目先の支出に使う財源は、本来まったく別のものだ。
にもかかわらず、
「運用益が出ているなら使えるのではないか」
という発想が、繰り返し現れる。
これは、長期と短期を混同した設計の問題である。
長期運用は「リスク込み」で設計されている
年金や将来資金の運用は、
好調な年だけを想定して設計されているわけではない。
- 上がる年もあれば
- 大きく下がる年もある
- それらをすべて含めた結果として
年率数%程度を見込む
という前提で、
資産配分や給付設計が組まれている。
つまり、
運用益は偶然の上振れではなく、 リスクを引き受けた対価として想定されている
上振れした年だけを切り取るという発想
ここで問題になるのが、
「今年はうまくいったから一部を使おう」という考え方だ。
- 上がった年の利益は使う
- 下がった年の損失は将来に回す
この非対称な扱いを続けると、
- リスクは常に残る
- 期待リターンだけが削られる
- 長期設計が成立しなくなる
結果として、
リスクだけを国民が引き受け、 リターンは別用途に回される
という構造が生まれる。
これは投資としても、
制度としても健全とは言いがたい。
財源として見たときの根本的な不安定さ
運用益は、短期の支出を支える財源には向かない。
- 相場に左右される
- マイナスになる年もある
- 景気後退局面では一気に逆回転する
長期で平均化して初めて意味を持つものを、
短期の財源として扱うこと自体が、
時間軸の取り違えだ。
長期のために積み立てたものを、 短期の財布として扱う
このズレは、必ずどこかで歪みになる。
責任の所在が見えなくなる
税であれば、
- 集める責任
- 使う責任
- 足りなかったときの説明責任
が比較的明確だ。
一方、運用益を使う場合は、
- 上振れしたら「使える財源」
- 下振れしたら「市場環境のせい」
となりやすい。
利益は使うが、 損失の責任は引き受けない
という構造は、
民間であれば許されない。
制度であっても、
同じ問題を抱える。
問題は再分配ではなく「時間軸」
この話は、
- 配るべきか
- 配らないべきか
という再分配の是非を論じるものではない。
問題は、
将来のために設計された資金を、 今の支出に流用してよいのか
という、
時間軸の整合性にある。
長期と短期を意識的に分けなければ、
どんな制度もいずれ破綻する。
おわりに
長期運用とは、
不確実性を引き受ける代わりに、
時間を味方につける仕組みだ。
その前提で設計された資金を、
上振れした年だけ切り取って使うのは、
構造として成り立たない。
これは感情論でも、
政治的主張でもない。
長期と短期を混同しないこと。 リスクとリターンを切り離さないこと。
それだけの話である。
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この記事を書いた人 Wrote this article
ぜんたろう
FP2級/宅建士。お金の話が好物。インデックス投資がメインなのに個別株・ETFにも手を出す。ここ数年で投資スタイルが確立した筈だがジャンク株に心を奪われがち。 --- 永遠の見習いプログラマ (SIer複数→スタートアップ複数→大きめベンチャー)