死亡者のサブスクリプションは誰が止めるのか

※この記事は、以下の記事をきっかけに考えた制度設計の話である。

近年、サブスクリプションサービスは生活に深く入り込んだ。
音楽、動画、クラウド、ソフトウェア、さらには日用品まで、
多くの契約が「自動更新」を前提に設計されている。

一方で、ある前提だけが抜け落ちている。

契約者が死亡したとき、どうするのか。

現状は「誰も止められない」構造になっている

現実には、契約者が亡くなっても、

  • サブスクは自動更新され続け
  • クレジットカードから課金が続き
  • 遺族が気づいたときには、どこで何が引き落とされているのか分からない

という事態が珍しくない。

これは遺族の不注意ではない。
制度と契約の設計が、死亡という事象を想定していないだけだ。

なぜ「民間の努力」では解決しないのか

よくある反応は、

各サービス会社が対応すればよい

というものだ。

しかし、これは構造的に無理がある。

  • サブスク事業者は、契約者の死亡を知る術がない
  • 勝手に止めれば、不正申告や契約トラブルを招く

その結果、「本人確認ができない限り何もしない」という判断になる。
つまり、

止められないのではなく、 止めてはいけない設計になっている

という状態だ。

問題の本質は「判断主体の不在」

この問題の核心は、ここにある。

  • 生前:本人が判断・管理する前提
  • 死後:本人はいない

しかし制度は、本人が存在し続ける前提のまま動き続ける
結果として、

死亡した瞬間に、
正当な操作主体が消える

という奇妙な空白が生まれる。

この空白を、
遺族の努力や根性で埋めさせているのが現状だ。

法整備でやるべき最低限のこと

ここで必要なのは、
理想論ではなく最低限の仕組みである。

1. 死亡事実と連動した「一時停止」

  • 死亡届が受理された時点で
  • 個別契約の中身には触れず
  • 継続課金だけを一時停止する

解約か承継かは、
遺族が落ち着いて判断すればよい。

2. クレジットカード側での継続課金ブロック

実務上、最も効果が高いのはここだ。

  • 本人死亡が確認されたカードについて
  • サブスク型の継続課金を自動停止
  • 明示的な承継があれば再開

技術的には、すでに可能なはずである。

3. 「止める権利」を制度として明文化する

重要なのは、

  • 止める義務
  • 止める猶予
  • 止めても違約にならない

という点を、法律で明確にすることだ。

これがない限り、
事業者もカード会社も動けない。

これは誰の仕事なのか

この問題は、単一省庁では解決しない。

  • 死亡届・住民情報
  • 金融(カード)
  • デジタル契約
  • 消費者保護

すべてが絡む。

つまり、

縦割りをまたぐ調整役がいなければ、
永遠に「誰の仕事でもない」問題

になる。

どこの省庁にとっても優先順位は低そうな話だが、
デジタル庁あたりが頑張ってくれないだろうか。

「自己責任」で片づけるには重すぎる

この問題は、

  • 金額の大小
  • ITリテラシー
  • 家族関係

とは関係なく起きる。

しかも、起きるタイミングは
人生で最も余裕のない時期だ。

それを

管理できなかった遺族が悪い

で済ませる社会は、
健全とは言いがたい。

おわりに

生きている間だけでなく、
死んだ後ですら、

個人の判断力と管理能力に
過度に依存する社会

は、どこかで破綻する。

死亡者のサブスク停止は、
小さな問題に見えるかもしれない。

だがこれは、

  • デジタル化
  • 自動化
  • 自己責任化

が進んだ社会における、
典型的な制度のほころびだ。

放置すべきではない。

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ぜんたろう

ぜんたろう

FP2級/宅建士。お金の話が好物。インデックス投資がメインなのに個別株・ETFにも手を出す。ここ数年で投資スタイルが確立した筈だがジャンク株に心を奪われがち。 --- 永遠の見習いプログラマ (SIer複数→スタートアップ複数→大きめベンチャー)

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